先日、猛暑36度の中、決行された月1の庭めぐりの会で、迎賓館 赤坂離宮の「和風別館」に伺いました。こういうとこ…

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国はどのように海外賓客を「もてなす体験設計をしているのか?- 迎賓館 和風別館 –

先日、猛暑36度の中、決行された月1の庭めぐりの会で、迎賓館 赤坂離宮の「和風別館」に伺いました。こういうところをじっくり巡れるのは、うれしいものです。

建築は、谷口吉郎。NYのMoMAGINZA SIXを手掛けた谷口 吉生のお父さんです。残念ながら、内部は写真撮影不可で、写真がありません。

特に、海外からの賓客を迎える際に、赤坂見付に近い東門から入って、そのままこの和風別館に切れ目なくすーっと入れる導線が、気持ち良い。

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東門は、道路の外から見ることができます。

内外が連続するなめらかな体験設計が際立ってるのです。

たとえば、門から別館の扉までのアプローチが、中庭的つなぎになっており、その中に組み込まれつつ、要所に、季節を感じる盆栽を置かれた時の印象が計算されつくされてる点。

中に入ってからは、メインの和室広間から外をみやると、池が「縁」になって、庭の空間がさーっと平面的にひらける感覚になる。そして、庭の丘や道のすべてにふくよかなリズムがあり落ち着く点。

そして、体験しないとわからない素晴らしい点。選り抜きの素材が醸すアンビエンスです。重くも軽くもないニュートラルな空気密度。丁寧に磨き込まれながら、くつろげる空気感。美しかったです。じわじわ、うっとりしました。

顧客体験設計の参考になります。メディアやリアル店舗における体験のみならず、商品サービス全体における顧客体験価値を考える方は、予約して見る価値ありです。

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面白かったこと。

当たり前ではあるのですが、和風別館は靴を脱ぐようにできています。中は絨毯なのですが、ここにスリッパも履かずに入るのがデフォルトの日本文化の設定。昔は足袋だったんだもんね。

ところが、海外の来賓にとっては、靴を脱ぐ姿は見せてはならぬもの。前回トランプ米大統領が来た際は、靴を脱ぐところは写真撮影しないように。というお達しで、ガードが見えないように守り、それからスリッパに履き替えたそうです。

エリザベス女王の時も同じく、事前調査団がリサーチした時に、そこだけ唯一「どうしよう」ということになり、「検討します」と持ち帰ったとか。結果、エリザベス女王の足型が送られて来て、それを参考に西陣織のスリッパをお作りしたそうです。女王ももちろん、靴を脱ぐ姿はお隠しになって、履き替えられたそうです。

この「文脈の違い」を多様性として理解しながら、互いの接点を創造するのが現代のコミュニケーションデザインに求められてることだと思いました。この和風別館で興味深かったのが、日本建築がベースだけど、超多忙な賓客の接遇高機能を求められてるため、違う文化の訪問者がギャップを感じすぎることなく、その人自身でいられる想定がフレキシブルにできてることです。

いちばん奥にあって、会食を終えた後に賓客が急いで移動してくつろぐのが茶室も、来客に慣れない正座を強要するのではなく、椅子に座って外からお茶を劇場のようにみるようになっていました。

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最後に、個人的に感じた課題です。

こんなに滑らかにコンセプトと体験設計がされていながら、ところどころ、何故?が見えない思いつきのコメントを当時の首相が入れていることで変更がされてるんですよね。

たとえば、トランプ米大統領と安倍首相の有名な鯉の餌やりの場所。鯉もかつての首相の意見でいれられたそうです。しかし、そもそも、谷口は手前の水の鏡面効果を狙っていたし、これはとてもミニマルな美しさがあったはず。だから、水は浅くはられていた。これに「なぜ鯉がいない?」と鶴の一声で、鯉が入れられたそうです。(そして、最初は水が浅かったので、約50匹死んでしまったとか。)

鏡面効果は、部屋の中からだといまだにありますが、全体で効果がうすれるのは確か。一方、鯉は、鯉へのえさやりも含め、海外の賓客がよろこぶし、会話にもなるのも確か。

首相がどれだけ設計の意図・効果・実益を考えて発言するかとは限らないし、こういった意見があった時、運営側が真に受けて受け止めて取り入れる体制はブランンディングやる人間として、考えさせられます。

どんなに丁寧に対応したとしても「言われたことへの部分反応」に終わると、ミスマッチが大きくなっていってしまって、せっかくの一貫した接遇ロジック(相互利益になる接遇)と流れが失われるから、コメントについて、ちゃんとディスカッションする基準と仕組みがつくれることが大事だと感じました。企業でも同じですね。

受け継いできた文化をしがらみにすることなく、本質を受け継ぎ、そこから新たにしていく。これからの日本にも、企業にも大事なことに思います。

※ ネオバロック様式の本館も、見学してきました。ヴェルサイユやルーヴルに比べると恐ろしいほど軽やかです。日本的ネオバロックと感じました。「謁見の間」である朝日の間は、公開されてませんでした。残念!


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