経済発展の果ての「幸福度」とは?

  日本では、経済発展が極まり「幸福度」を重視する方が増えました。しかし、国連が毎年発表している「世界幸福度レポート」(2012年~。生活満足度について10段階評価で答える)では、日本は40位を上回ったことがなく、近年は4年連続の50位台を記録しています。日本は健康寿命で2位、1人当たりGDPで24位ですが、ランクが低いのが、人生の選択の自由度(64位)、寛容さ(92位)。


 だからこそ、近年はそれを打破する流れが起こっています。ミニマリズムや断捨離・片付けが注目されたり、大量消費ではなく〈サステイナビリティ〉を気にするようになったり、売れない時代と言われますが「たくさん買うよりも、少なくても自分がよいと思えるものを」とクオリティを重視するライフスタイルが注目されています。幸福をともなうゆたかさとは〈サステイナビリティ〉にあると気づく人が増えてきました。

自然も人も“いのち” の連なり。日本のゆたかなライフスタイル


  ところが、それは古来、日本にすでにあったライフスタイルです。日本では、自然も人も、すべて同じく “いのち” の連なりだと考えられてきました。そして美しい〈アート〉を通じて、人(いのち)と自然(いのち)のつながりを日々実感し、具体的にゆたかになるライフスタイルを実践していました。

それを世界中の生活に広げたく、私は仕事を行なっています。経済発展も天然資源もポテンシャルがない日本が、世界に貢献できるひとつのリソースだと考えたからです。

 その気づきの原点は、幼い頃の祖父との思い出にあります。祖父は、床の間に、季節ごとに美しい掛け軸をかけて草花を活けて、漢詩や和歌について講釈をしてくれました。内容はわからなくても、とてもワクワクしました。そこから、大学では美学美術史学を学び、人が芸術に触れる意義について
考えるようになりました。それを生活の場にも広げていきたいと思い、アート・デザイン・ファッションを通じたブランディングの仕事に進みました。

衛星写真を通してみた地球《EartH》

 JAXAの地球観測センターの周年事業で周年パンフレットを作って欲しいと依頼を受けた時のこと。先方にとっては衛星写真は研究対象であるデータでしたが、それがとても美しかったので《EartH 》という衛生写真を使ったアートブックを作り、一般の方にも広く配布し、宇宙から見た地球を感じてもらう提案をした事があります。

 自分たちが伝えたい説明をするよりも、美しいビジュアルに触れるだけで、自ずと地球とのつながりを思い出すと考えたからです。「幸福」や「ゆたかさ」は内側に湧いてくるものだけに気づきにくい価値ですが、手に取れる「モノ」があることで、より鮮やかに刺激を受けて、見えない価値に気づきやすくなります。

結果、制作予算は上がりましたが、配布した先から「美しい」「本、大事にします」など、多くの賞賛のコメントをいただき、社内のチームのモチベーションも大きく上がりました。

作品を通して大切なものにつながる


 また、2019年には、自然と人をつなげるアルチザンの作品をお届けする場としてギャラリー《MOIKA GALLERY》をスタートしました。美術工芸品は、富裕層や茶事などに使われるものというイメージかもしれませんが、作品を通して個人の内側で大切にしているものにつながることの素晴らしさを改めて教えてくだったお客様がいました。

ご実家がお茶農家だったため、毎日お茶を嗜む白磁の茶器をご紹介しました。彼女がお茶を飲むたびに親御さんとのつながりや、地元のお茶畑を思い出せるとお礼をいただきました。世界各地では、移民の受け入れや、それに対する保守化など、多くの分断が問題になっています。ささやかながら大事な人とのつながりを深める機会になり、私も大変嬉しく感じました。これからも、内側の幸福とゆたかさを広げる媒介となる作品をお届けしていきたいと思います。

アートを通じて人と人・人と自然・すべての “いのち” のつながりに触れるからこそ強く響くことを、私自身も学ばせていただきました。これからも、一人でも多くの方がそのようなあり方に触れる場をつなぐサポートをしていきたいと思います。





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